量子情報:北海道大学大学院情報科学研究科情報エレクトロニクス専攻先端エレクトロニクス講座

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情報技術における二つの挑戦

情報技術における二つの挑戦

 量子情報科学が注目されているのは現在の情報技術の課題を解決できる可能性があるためです.課題の 一つは超高速計算機の原理的な限界です.

 コンピュータの能力は常により高いものが求められます.は環境問題や気象問題の解析には大規模なシミュレーションが必要になります.また,製薬などでコンピュータによる分子設計を行うとき複雑な条件の下で非常にたくさんの選択肢から最適なものを選び出すことが必要です.従来,こうした問題を解決するためにスーパーコンピュータとよばれる高性能な計算機が開発されてきました.現在も一番を目指して世界中でより強力な計算機の開発競争が行われています.これらの計算機ではプロセッサの数を増やし,高いクロック周波数で動かすことで高速化を行っています.
ところが,高集積化・高速化には限界があります.半導体デバイスを高速で動作させるとそれだけ消費電力が大きくなり,それに伴う熱の発生が大きくなります.高速化・高集積化のためには素子の大きさを小さくする必要がありますが,素子の代表的な大きさが10nm程度以下になるとこれまで無視していた電子の量子的な効果が無視できなくなり,デバイスが思った通りに動かなくなってしまいます.

もう一つの課題は情報セキュリティです.重要な情報が電子化され,ネットワーク上を行き来するようになっています.これらの情報が他の人に知られないこと,誤った情報にすり替えられないことは非常に重要です.このために,様々な暗号技術が開発され,実用化されています.例えば私たちがインターネットで買い物をするときにはパスワードで本人であることを確認し,通信内容も暗号化されて安全な取引が行えるようになっています.
私たちの買い物程度ではそれでも十分かも知れませんが,経済,外交,防衛,社会インフラなど安全性が失われたときの社会的影響の極めて大きい情報もあります.これらでは最高度の安全性が要求されます.現在の暗号システムはコンピュータで解読するのに天文学的な時間がかかることを安全性の基礎にしています(計算量的安全性).これは将来コンピュータ技術や解読技術が進歩すると安全でなくなってしまう可能性があります.そのため,将来どのように技術が発展しても安全性が保たれる情報理論的安全性が検討されています.


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▼ 量子情報の解説

Akihisa Tomita
教 授
富田 章久
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